物忘れ

「久しぶりに会った人の名前が思い出せない」このような経験は誰にでもあります。物忘れは単に年齢のせいで起こるもので、年齢を重ねれば誰にでもあります。
一方、認知症は病気です。認知症とは「脳や身体の疾患が原因で、一度獲得した記憶や判断力などの障害がおこり、日常生活に支障をきたすようになった状態」です。
したがって、通常できていた日常生活や仕事ができなくなっている状態です。物忘れがあるとういうだけで認知症とは診断されません。

認知症の人はどれくらいいるの?

我が国の65歳以上人口における認知症の有病率は8.5%です。
年齢別でみると、65歳~69歳では1.5%にすぎませんが、年齢を重ねるとともに増加し、85歳以上では27.3%、4人に一人は認知症であるといわれています。
認知症は決してめずらしい病気ではありません。

認知症の症状は?

同じ事を何回も言う
置き忘れやしまい忘れが目立つ
物の名前が出てこない
以前はあった興味や感心が薄れた
時間や場所の感覚が不確かになった
些細なことで怒りっぽくなった
財布が盗まれたという、だらしなくなった
以前より疑い深くなった
といった症状が多く見られます。

治療可能な認知症があります

認知症の原因となる疾患は表のように多くあります。
これらの中で何らかの治療が可能な病気も多いのです。
ですから認知症は早期に発見し、まず原因を究明し、早期に適切な薬物治療や生活指導など、適切な対応をとることがとても重要なのです。

表2.認知症の原因となる疾患 (緑色は何らかの治療が可能)

認知症の原因となる疾患は表2のように多くあります。

脳血管性疾患 脳血管障害による認知症(脳出血、脳梗塞など)
退行変性疾患 アルツハイマー病、びまん性レビー小体病、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、ピック病、ハンチントン舞踏病、大脳皮質基底核変性症 など
内分泌・代謝性中毒性疾患 甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB1欠乏症、肝性脳症、透析脳症、低酸素症、低血糖症、薬物中毒 など
感染性疾患 クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症、脳炎、髄膜炎、脳膿瘍、進行麻痺 など
腫瘍性疾患 脳腫瘍、髄膜浸潤など
外傷性疾患 慢性硬膜下血腫、頭部外傷後遺症 など
その他 正常圧水頭症、多発性硬化症、神経ベーチェット、シェーグレン症候群など

また、2011年はアルツハイマー型認知症の治療薬が新しく3種類が認可され、治療法の選択肢が増えました。物忘れが気になる方は、お気軽に当院のもの忘れ外来へお越しください。